【ゲームの紹介】
さて、前回に引き続き「G線上の魔王」の感想です。今回は4章の感想です。1度全て最後までクリアした後に書いているので、めちゃめちゃネタバレを含んでます。ご注意を。
以下、重大なネタバレを含む……。
【ゲームの感想】
第4章 交渉の死角
予想の斜め上の展開だった。姉妹関係といい、事件の真相といい……ね?ユキ、そして交渉という要素をいっぱい使いたかったんだろうなと思う。しかし、振り返ってみるとユキとハルってあんまり大した関係じゃなかったよね。名前的にも何か深い関係があるのかと思っていたけれど。この√の好きだったところは①ユキの美しさ②水羽の可愛さ③ユキの複雑すぎる心情。
まず①ユキの美しさについて。制服姿のユキも可愛いね。交渉人の技術、ワイも勉強したい。交渉人や犯罪心理学を勉強していたユキでさえ、あるいはだからこそか、魔王に憑りつかれてしまったところ見ると、悪の誘惑って恐ろしいね。ところで、ユキの母親ってどんな人物だったんだろう。白鳥理事長の秘書のようなことをしていたり、過去においてアーティストであったり……なかなか多芸な人やね。
次に②水羽の可愛さについて。どうして主人公に気があるのかは個別√に入るまでわからなかったけれど、話してるちょっとしたタイミングで照れるときが可愛い。
続いて③ユキの複雑すぎる心情について。これと④がこの章のポイントだったと思う。ユキに関しては本人以外の視点からでは、なかなか本心が見えにくいところが多かったが、ユキ視点になるとその複雑な気持ちがわかった。別に妹である水羽に何かされたわけではないけれど、というかだからこそ水羽を恨むことになった。自分と母親が苦しいという言葉では足りないほど悲惨な環境にいたのに、水羽は探してくることすらしなかった。かたや地獄のような環境で育った人、かたや温室で育った人。わかり合うことはできないという想い。また昔から変わらず甘えんぼであるというか、温室育ちな水羽にイライラするところもあったと思う。しかし、それでも妹に対する愛はあった。まあ、幼少期をともに過ごしたというのもあるし、血を分けた妹だもんね。そしてもちろんユキを動かす最大の原動力は理事長(片倉も含めて)への復讐心。
「復讐が問題の解決にならないことは知っているわ。でもね、救いにはなるのよ。復讐こそが唯一の救いだと思い込んでしまったら、もうあとには引けないわ」
これ、けっこうポイントだと思ってる。ベタなシーンなのかもしれないけれど、水羽がユキをかばおうとするシーンはちょっと感動した。普段、口下手な少女が胸が張り裂けそうな想いを叫び、姉は姉で妹に対する想いを捨てきれないというシーン。
水羽の章
この個別√けっこう面白かった。鈍感というかひねくれている主人公、そして口下手な水羽、そんな2人を茶化そうとするユキ、日常シーンの掛け合いが面白かった。今まで緊迫した場面が多かったからか、日常ほのぼのが多くて別ゲーみたいな感覚になるくらい。水羽が若干キャラ崩壊レベルにまでなっていたけれど、これくらい乙女チックというかお子ちゃまなのが素なんだろうな。デートシーンとか普通に純愛美少女ゲみたいな雰囲気になっていて良かった。
水羽、けっこう可愛いよね。4人の攻略対象の中だと元々1番攻略したいと思っていたのは水羽だったというのもあるかもしれないけれど、かなり魅力的なキャラクターだなと思った。普段の学園では深窓の令嬢みたいな雰囲気を出しているけれど、甘えんぼで少女趣味でお嬢様なところ、可愛い。上目遣い白鳥、可愛い。京介に冷たく当たられた後、「わーん、姉さん、ダメだったよぉ……!」って甘えるときの水羽、そしてSD図が可愛い。この√に入るまでずっと水羽が主人公に気がある(惚れた)理由が気になっていたのだけれど、わりと純粋(平凡)なものだった。それもそれで可愛い。やはりこういうお嬢様タイプの人ほど自分の住んでいる世界からは遠いちょいワルに憧れるものなんだろうか。
「……わからない……でも、どうしようもない」
このセリフに全てが詰まっている気がする。好きだから好きなんだもの。仕方ない。しかし、真に付き合えるようになるまで水羽は辛かっただろうね。自分は相手の方を向いているけれど、相手は自分の方を向いてないときほど辛いときはない。相手との距離を縮めるために相手の趣味を勉強するの健気で良い。今のワイと同じ。不謹慎かもしれないが、肺炎で倒れるシーンの水羽、可愛い。ウエディングドレスも似合っていた。
もちろんユキについても触れないわけにはいかない。ユキが水羽をけしかけて主人公とくっつかせようとしているのは、水羽のことを思いやってのことだろうとは思っていたけれど、裏にある気持ちまでは汲み取れてなかった。「え?もしかして、陥れようとする気持ちとかある?」ってなっていたけれど、そうではなかった。単純に自分がいなくなった後のことを考えていただけだった。
ということでBad Endは今まで以上のBad Endだった。ノベルゲームとかにありそうなBad End。後悔している、そして主人公に対して殺意を持っているユキを見ると、やはり妹のことを大切に思っていたんだということがわかるね。
山場に関しては他のヒロインほど(家の立ち退き、世界選手権)差し迫ったものではなかったと思うけれど、過去の清算という重要なものであることに間違いはない。ちなみに、成長した水羽も可愛い(服装も似合っている)。水羽の父親は過去に様々な罪を犯したがそのどれからも逃げており裁かれていない。きちんと罪に向き合うべきであると水羽は思っている。ただ、ユキとその母親の件に関しては水羽も同罪であると水羽自身が思っている。何も行動しなかったのだから。そこで、自分の罪を棚に上げて父親の罪を追求するようなことはせずに、言葉のやりとりでもって父親が自分の罪に向き合う王に仕向けるという道を選択した。これにはユキの「もっと、人を知ろうとしなさい。そして、言葉で人を動かしてみなさい」」という言葉が強く影響している。姉の言葉を信じ、自分の罪を認め、口調や仕草が似るぐらいに姉のことを想っていた水羽が、父親から「ユキに謝りたい」という言葉を引き出したシーンはちょっと感動。思っていたことを一息に口に出すシーン、好き。実際にセリフがドワーって表示されてワーワーワーってなった。過去の清算とは言えないかもしれないが、ユキと水羽の再会も重要だと思う。一方的に守られてばかりだった水羽が一人前の人間になったということをユキに見せるという点でも、ユキが水羽に謝る(急に置いていってしまったこと、実は水羽に対しても恨みを抱いていたこと)という点でも大切。ようやく姉妹は心の底から通じ合えるようになったのね。
ただ1つ気になったのが、主人公が水羽に好意を抱くようにいなる理由があまりわからなかったこと(これはワイの読み取り能力が低いだけの可能性があるけど)。ユキも言っていたように、主人公が水羽のことを好きになるにはもう一押し何か理由が必要だと思っていたけれど、意外とコロっといってしまって驚いた。健気さ(ひたむきな想い)に心打たれたって感じ?
本編の処理をどうするのかと思ったけれど、めちゃめちゃあっさり片づけてたね。こうなるとちょっと橋本もかわいそう?やっぱりハルにさようならを言われるシーンは辛かった。
第5章 G線上の魔王
ついに過去の全てが明らかになった。いや、ハルの父親、極悪非道やないかい。こいつが全ての元凶やね。利勝は殺したことに後悔を持っていなかったようだけれど、それで良いと思う。さて、この章のポイントといえば①魔王の正体②主人公とハルの気持ち・関係性③浅井権三④ハルというキャラクター⑤魔王というキャラクター⑥壮大な展開
さて、1番のポイントといえば魔王の正体かもしれないが、これについて少し言いたい。ミスリードが露骨すぎる!京介の兄弟が魔王であろうことは実は2章の段階で予想がついてしまっていた。まず1つのポイントが水羽のセリフ。夜中に歩く魔王に対してバルコニーから水羽が
「浅井くん……?」
「こんな時間に、なにをしているの?」
と声をかける。この時点で、(1)京介自身(二重人格説)(2)京介と外見が似た誰かということになる。次にポイント2つ目。魔王のセリフ。
「おれは、つい最近になって、浅井と名乗る京介の存在を認識しつつあった。」
もし、二重人格説なら
「おれは、つい最近になって、浅井と名乗るおれの存在を認識しつつあった。」
の方が自然な気はする。というのもあるし、さすがにミスリードが露骨すぎるというのがあって(2)、まあ要は兄弟だと予想していた人も多いと思う。二重人格説のミスリードはもう少し後からでも良いかなとも思ったけれど、シナリオの展開上難しいのかな。
次に②主人公のハルに対する気持ちについて。昔、勇者と名乗った少女は自分のことを助けてくれた。しかし、その少女は仇の娘だった。また、ハルからしても父に狂わされた家族の一員であると同時に、母親を殺した魔王の家族でもある。あまりにも複雑すぎる関係。こんがらがった糸をほどくのは容易ではない。しかし、ハルの方はわりと主人公にゾッコンだったよう。周りの女の子たちに嫉妬していたぐらいだからね。最終的には手を取り合えたようで何より。
③浅井権三というのもなかなかの怪物であった。全く持って許されるような人間ではないが、ある意味、筋の通った傑物ではあった。権三が最後、主人公をかばうようなことをしたときの気持ちはわからないけれど。難しい。
「悪とは、いまだ人のうちに残っている動物的な性質にこそ起源がある!!!」
「復讐に救いを求め、救いに悪を成さんとする貴様は、遠からず己が悪行のもろさを知るだろう!!!」
権三こそは本当の悪党だったんだろうな。これが本物。誰にも従わない、孤高な生き物。
④ハルというキャラクターについて。ハルはわりとわかりやすかったね。最初から主人公にゾッコンな感じは出ていたから。ただ、魔王に対する異常な執着を5章になってより強く感じたね。今までも執着しているなとは感じていたけれど、平常心を失うような姿は見たことなかったからね。母を殺されたからというだけでなく、ヴァイオリンを奪われたというのも大きな理由だったのね。ハルがヴァイオリンを弾くシーンがやってきて、「うぉー!サンプル画像で見たやつだー!」ってなったけれど、実際、弾かれることはなかった(というか、最後まで実際に目の前で演奏してもらうシーンはなかったよね、ちょっと残念)。なんか長い髪の毛×ヴァイオリンとうことで、5代目鬼太郎の夜叉の回が頭を過った。ある意味、ハルも夜叉に憑りつかれたような状態だったといえる🦆。
続いて⑤魔王というキャラクター。復讐に救いと求めた愚かな(哀れな)犯罪者と行けるかもしれないが、個人的にはけっこう好き。動機がいつの間にか「日本のありとあらゆるものを破壊してやりたい」と大きくなってしまっていたのは悲しい事ではあるが。やろうとしていたことを全てやり遂げたというのもまたかっこいい。利勝を生きさせることはできなかったけれど、1人で国家に挑み、実際、勝利しているのだから魔王の勝ちではあると思う。しかも、その後にまだ計画があったのだから。これは最終章で。
⑥壮大な展開。これまで身代金誘拐、有名アスリート選手への殺害予告、2段階立てこもり事件と来ていて、最後はよっぽどスケールがでかくなりそうだなと思っていたら、予想以上にスケールがでかくなって驚いた。まあでも、こうなるよね。染谷、時田父など関係者全員集合!になってた。こういうカタストロフィみたいな最後、個人的にはけっこう好き。最後の章というだけあって、「と思いきや」みたいな展開が連続していて面白かった。
キャラクターの感想でまだ書いていないのが栄一。最初、登場したときは、「あー、幼馴染枠は男の娘的なキャラクターなんかー。んー、でも全然タイプじゃないなー。」なーんて思っていたけれど、裏表のあるキャラクターということで男の娘的なおし方はしてこなかったから良かった。絶体絶命の主人公を助けたときは、うぉー!ってなった。やるやん、エテ吉!同じような感じで堀部に出会えたときの安心感はすごかった。
最終章 春
驚きの展開。魔王の描いた計画は予想の更に上を行っていた。恐るべし。元々この作品は瞬間最大風速がすごい作品と聞いていたのだけれど、その理由がわかった。取調室のシーンは確かにけっこう感動した。挿入歌の「Close Your Eyes」がまた良いね。椿姫の章で嘘をついてまで主人公を守ろうとしていた椿姫、花音の章で不正を目の当たりにしても矜持を失わず対応した花音、権三によってピンチになっていたユキを守ろうとした水羽、そして妹への愛情を捨てきれなかったユキ、みんな守りたいものを守ろうとしていたあたたかさがあったわけだけれど、それを今度は主人公が発揮する側に回っていて成長したなと思った。それも感動ポイント。
それ以外のどうでも良い感想コーナー。ミキちゃん、本当に何の関係もない人だった……。
【項目別】
今回からは評価基準が変わります。別の記事に書いていますが、①シナリオ(18)、②Graphic(7)、③H度(6)、④システム(5)、⑤サウンド(7)、⑥ボイス(7)で評価します。
《①シナリオ》
17/18です。ミスリードが露骨すぎたこと以外は個人的にはけっこう気に入ってます。メイン√以外は手抜きだという意見も見かけましたが、そんなことはないと思います。確かにメイン√に比べたら短いし、メイン√の最後のような感動はないかもしれませんが、十分、内容は濃かったと思います。「消化試合なんだろなー」と思って個別√を始めましたが、普通に面白かったです。
《②Graphic》
5/7です。まあ16年前のゲームなので古さはありますが、別に抵抗なく受け入れられました。立ち絵の数自体はそこまで多くないですが、SD図などもあり、普通に楽しめるとは思います。
《③H度》
3/6です。正直Hが目的のゲームではないと思うので、これに関しても文句ありません。
《④システム》
3/5です。これも平均です。文字の色を変えられるのは面白いなと思いました。なんか、画面がガタガタになることがあるんですけど、これはワイニキだけ?
《⑤サウンド》
7/7です。OP、挿入歌ともに好きです。というか曲が好きでこのゲームに興味を持ったようなもんですからね。またこのゲームはBGMもレベルが高かったです。クラシックが元になったもの多く、どれも聴く価値アリだと思います。個人的には設定で曲名を表示するようにしておくことをオススメします。私は1周目、メイン√をクリアしてからonにしましたが、もっと早くやっておけばよかったと後悔しました。
《⑥ボイス》
5/7です。けっこう声優陣、豪華だった?北都南さん好こ。宇佐美ハルのcv.しまりのも合っていたと思います。
以上、40/50でした。けっこう高評価ですね。
〇メモ
成績が悪いから叱る→もともと悪かったのだから次は伸びる場合が多い。
成績が良いから誉める→もともと良かったのだから次は下がる場合が多い。
なるほど、言われてみれば確かにそう。
公平な世界の信念…誰もが理不尽な不幸なんて簡単には訪れないと思ってる。だから、理由もなく不幸に見舞われた人のことは、能力が劣っているからそんな目に遭ったのだと思ってしまう。
〇名言
「もっと、人を知ろうとしなさい。そして、言葉で人を動かしてみなさい」byユキ
「ご遺体ではなくBody、仏さんではなくItだと。」by魔王
傭兵になる人は覚えておいてください。