長月キョウカのあしあと

つれづれなるままに

【ゲームの感想】サクラノ詩 -櫻の森の上を舞うー part5

【ゲームの紹介】

 さて、いよいよ今回でラストになります。枕より発売の「サクラノ詩」です。今回はVとVIの感想を書いていきます。

 以下、重大なネタバレを含む……。

 

 

 

 

 

 

 

【ゲームの感想】

《V》

 一応、最も良いエンドを迎えた√と言って良いのかな?もちろん悲劇が起こっているしその他にもいろいろと喜べないところがあるかもしれないけれど、蓋をせずに現実に立ち向かったという意味で、この√は良いエンドだったと思う。「The Happy Prince and Other Tales」ということで、直哉と圭の√と言っても良いわね(一応、扱い的には藍の√なんだろうけれど)。直哉の人間像を表すのに幸福な王子はぴったりね。圭のこと、稟のこと、いろいろと衝撃的な√でした。アトリエで話す圭と直哉の一枚絵、けっこう好きなんだよなあ。圭はどうして魂を失ってしまったの。

 いろいろと印象的なシーンはあったけれど、個人的にポイントだなと思ったのはウイスキーを暴れるように飲んだ直哉を藍が見つけるシーン。そこでの会話。幸福な王子のように生きてきた直哉がそれが正しかったかどうか懊悩するシーン。難しいよね。自分はそうすべきだと思って歩んできたけれど、その結果として親友との夢を叶えることができなくなった。答えの出ない難問に正直、藍もかける言葉を悩んだと思う。いろいろと背負わせてしまったことを謝罪するしかないよね。ただ藍も(そして私も)直哉の選んできた選択が間違いだったとは思わない。ちなみにここの選択肢で√が分岐するようだだけれど、藍とのシーンは1つだけみたいね。藍、声も見た目も(服装も含めて)かなりタイプなんだけれど、少々、ロリすぎるんだよなあ。合法ロリであるだけマシなんだけれど。もう少し顔が大人びていたらもっと好みだった、というただの個人的な性癖の話。

 さて、やはりこの√でも登場しました(ワイのお気に入りキャラクターの)長山香奈。今回の√では今まで以上の活躍をしていたね。めちゃめちゃ良い役どころもらってるじゃん。鳥谷とは逆に女から調べるタイプ。こんなにも長山のことを気に入ってしまうのは長山が凡人であるからだと思う。謎が多かったり天才が多かったりするこの作品の中で、意図的に凡人として作られたキャラだと思う。そしてだからこそ、プレイヤーは感情移入しやすいんじゃないかと思う(プレイヤーというのは言い過ぎかもしれないが、少なくとも私はめちゃめちゃ好きなタイプ)。凡人なんて行きつく先はたかが知れており、自分の程度もすぐにわかってしまう……。でも、天才はそうではなく、自分も天才のようになりたい、天才でありたいという憧れ・嫉妬の話を『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』を交えて話していた。そこで長山は奇抜さを大事にすることを考えて、それがVIにつながっていくわけだね。これまたサクラノ詩ではあるあるの展開だったけれど、ひどいことを言われているのに当の直哉が一切反論しなくて周りが「怒れよ!反論しろよ!」ってなる展開だった。ただ、長山の場合はただそれだけではなくて、「自分の世界に住めなくなった」原因がそんな状態では自分がより惨めになってしまうという気持ちも抱えてるから大変だよね。

 長山、ここで終わってしまうのか!と思ったいたけれど、そうではなくきちんと結論を出して夏目屋敷にやって来た。「その目だけは、その感覚だけは、本物でなければならない」と言っていたけれど、それがあるだけで十分凡人の域からは脱しているように思う。めちゃめちゃ俗な言い方かもしれないけれど、長山って直哉に脳破壊されてるよね。破滅してくれることはうれしくもあるけれど、それをただ黙って見ていることもできず、直哉の右手を奪った相手はめちゃくちゃに憎んでもいる。とにかく直哉に対して以上に執着するハメになっちゃったわけだから。直哉も罪な男ね。この後の展開も含めて、長山かなり重要なキャラクターだったね。

 

《VI》

 まさかの未来まで用意してくれていた。おそらくサクラノ刻で主要キャラクターとなるっぽい人物がそれなりに出てきてたね。恩田寧も弓張学園に入学していたみたいで、どんな物語を生み出すのか気になるところだ。咲崎桜子ってとんでもない名前ね。ポサラ大活躍。ノノ未ってどの√か忘れたけれど、一瞬だけ出てきてたよね。どの√だっけ(稟√?)?シナリオ自体はほんのちょっとというか、多分、後日談兼続編につなげるためのストーリー的なものを用意したかっただけだとは思うけど、実際、続きが少し気になったわね。鳥谷、若干髪型が変わってて、少し鳥谷紗希に似ているなと思った。ルリヲとか優美が初めて出てきたときは「こんなキャラに立ち絵用意してんの?」ってなったけれど、なるほど、続編で出てくるからなのね。いろんなキャラクターの後日談を聞けて面白いね。やっぱり、後日談って好き。めっちゃしょうもない意見なのだけれど、稟の胸、さすがに大きくなりすぎじゃない?雫は稟のマネージャー的な仕事についているのだろうか?

 ちなみにこの√でも長山はそれなりに活躍した。ただ、ここ最近での活躍っぷりとその内容を考えると、続編ではあまり登場しないのかなと思う。壇上に立たされて困り眉になっている長山を見たときはさすがに「やめたげてよぉ!」ってなった。

 にしても最終章というだけあって、言いたいことを言いまくります!みたいな感じでめちゃめちゃメッセージを投げかけてきたね。多分、全部は受け取れてないだろうけれど、受け取れたやつだけでも振り返ってみる。

 まず1つ目。「作品を作ること」について。これについては「何のために作品を作るのか」、これを見失わなければ問題ない。たとえそこに刻まれる名前が自分の名前ではないとしても。これについては『櫻達の足跡』を完成させたとき時点で明石は辿り着いていたし、雫√でも直哉が似たようなことを語っていたね。誰に届けたいのか、何を届けたいのか、が大切になってくるわけだけれど。創作活動とかをやっている人にはより一層響く言葉なのかな。私はどうしても自己顕示欲が出てしまうのだけれど。

 2つ目。作品は見られることによって完成する(更新される)。これは健一郎が病室で直哉に語っていたこととかぶる。「美は、見るものによって再び発見される」。なるほどねーなんて思っていたら、急に直哉がスーパーサイヤ人みたいに半裸になってびっくりしちゃった。

 3つ目、幸福について。これは『素晴らしき日々』でも繰り返し繰り返し取りあげていたし、シナリオライターのすかぢさんが伝えたいことなんだろうなとは思う。人は自分が幸福であることには気づきにくい。それが普通だと思ってしまうから。全てが光っており、まぶしすぎるから見ることができず、見ることができないから人は気付かない。「秘蔵の酒みたいに、捕まえることが難しい」ってのもそうね。何の話だか忘れたけれど、虹の足元にいる村の人たちはそれに気づかない的な話あったよね。あれとも似たようなものか。苦しみを感じるのは生きていこうとしているから。だから、身体の痛みを受け入れよ。それが生きるということである。これに関しては健一郎が言葉として残していたし、『夏空のペルセウス』でも似たようなことを学んだ。そして過ぎたる幸福は(酒と同じで)苦痛でしかなく、不幸と幸福は背中合わせ。直哉の信仰する神は「人とともにあるもの」ということだったけれど、これまた『素晴らしき日々』で語られていたものだよね。振り返ったとき、自分の足跡と寄り添うようにしてもう1つの足跡があるってやつ。そしてやはり出てきましたね。

「芸術作品は永遠の相のもとに見られた対象である。そしてよい生とは永遠の相のもとに見られた世界である。」

これはLudwig Wittgensteinの言葉のようです。『論理哲学論考』に挫折してしまった人間だから、「永遠の相」についてはきちんと理解できていない。ただ、永遠の相にあるものは幸福であるというのなら、芸術から美を感じ、感動すること(さぁ、受け取るが良い)が「よい生」につながるのかなーなんて薄っぺらい感想を持った。やっぱりこのあたりちゃんと勉強しないといけないよな。ぐすん。きちんと永遠の相について理解できたら『素晴らしき日々』も『サクラノ詩』もやり直したいと思う。

 最後の一枚絵(直哉と藍が並んで立っているやつ)、良い。ちなみに初めてエンディングに突入したとき、なぜかイントロの部分で音楽が切れちゃって「え!?」ってなった。再びやり直したらちゃんと流れたから、まぐれだとは思うのだけれど。このエンディング(兼オープニング?)良いよね。

 

〇メモ

・あんかけ葱チャーハン作りたくなった。

ゴーギャン「死の帝国」…天使と砂時計を持った老人、無限と神。

・エミリ・ディキンソンの詩

I dwell in Possibility 私は可能性の中に住んでいる

A fairer House than Prose 散文より立派な家に

More numerous of Windows 窓かずもずっと多く

Superior for Doors 戸も一層優れている

Of Chambers as the Cedars それぞれの部屋には

Impregnable of Eye 目も侵せない西洋杉

And for an Everlasting Roof

The Gambrels of the Sky 永遠の屋根には空の切妻屋根

Of Visitors the Fairest 訪問者は美しい人々だけ

For Occupation This そして私の仕事は

The spreading wide of narrow Hands

To gather Paradaise この小さい手をいっぱい広げて天国をつかむこと

 

〇名言

「いいえ、才能があれば、手軽にその場所まで届く。簡単にできるからこそ、簡単に捨ててしまえる」

「だって、その事に価値を感じないから」

「でも、才能がない人間は違う。その場所に手が届かないからこそあきらめない」

「才能が無い人間は、その価値を簡単に捨てる事が出来ない」

「それがとても価値のある事、自分の人生を捧げるのにふさわしい事を知っている」by長山香奈

才能が無いから諦めるんだと考えがちだけれど、そうでもないという考え。

 

「才能は凡人を裏切りますが、技術は凡人を裏切らない」

「努力で得た技術体系こそ、凡人の武器。凡人の刃だって、天才どもののど元に届く事がある」

「才人は、天才を惑わす技を持っている。何故ならば、才人は凡人であるからです」by長山香奈

 

「人間、自分の事となると一生懸命、正しく分かってもらいたいと考えるくせに、他人の事となると、わりかしいい加減にすべてを理解した気になるもんさ」by草薙直哉

 

【項目別】

 いつも通り①シナリオ②グラフィック③H度④システム⑤サウンドの5つの観点から振り返ってみましょう。

《①シナリオ》

 ★9です。10にしようかなと思ったのですが、『素晴らしき日々』に★10をつけてしまっており、個人的に『素晴らしき日々』のインパクトを引きずっており、少し物足りなく感じてしまったところはあります。ただ、名作であることに間違いはありません。長さは特に気になりませんでした。もったいぶった発言が多いのはもどかしかったですが、ゲームですからね。こういうもんだろうと思っています。

《②Graphic》

 ★10です。これは完全に個人の好みだと思います。色味と服装がめ↑ちゃ好きなんですよね。現実世界でこういう感じの服装をしている人に出会ったら、まず一目ぼれすると思います。見た目だけなら圭が1番好き。藍も好き(大人びていたらもっと良い)。鳥谷もなんだかんだで好き。そしてこの作品は芸術(特に絵画)をテーマにしているということもあって、豪勢な一枚絵がけっこう出てきました。描いた人は大変だったろうなと思いますが。落款印のシーンとかも凝っていて良かったと思います。

《③H度》

 ★7です。おまけという感じでもなく、ノイズになるほどでもなくという感じだったので、高評価です。個人的な性癖に一致するものが少なかったので、7ではありますが。ヒロインによってシーン数が違うので、人によっては文句を言いたくなる🦆?

《④システム》

 ★6です。特に何も問題なければ★6と定めています。めちゃめちゃ細かい設定ができるわけではありませんが、かといって何か困ることはありませんでした。ゲームの長さのわりにセーブデータ数が少ないのは少しヒヤヒヤしました(といっても9ページ目までで足りましたが)。

《⑤サウンド

 ★10です。今回は気に入った曲が2つもありましたからね。「Bright Pain」と「サクラノ詩」です。それ以外のエンディング曲やBGMも良かったと思います。

 

以上、★42/50でした。名作と聞いていて、実際そうだったのでプレイして良かったと思います。季節は既に6月になってしまいましたが(4月10日から始めて)。連続ではやらないと思いますが(少し気分転換のため&積みゲーが多いため)、「サクラノ刻」もやりたいと重いっています。

 

【雑談】

 大きな1つのプロジェクトが終わったような感覚です。次は「G線上の魔王」をやろうと思っています。というか起動確認までは終わりました。季節的には冬にやった方が良い的なことを目にしたのですが、前からやりたくてしかたなかったので、もうやっちゃいます。批評空間のプレイ時間を見たら25時間とのことだったので、サクラノ詩を終えた後なら少し短く感じる🦆。6月中を目途に完走したいですね。