【ゲームの感想】ふゆから、くるる。(途中経過7)

 さて、前回の記事を書いている途中に長くなりそうだから2回に分けるということで、この記事がその後編に当たります。ただ、解答を書いていくのは、ただのネタバレであり望ましいものではないので、予想の振り返りや考え事を中心にしていこうと思います。とはいえ、念のために書いておきマス。

以下、重大なネタバレを含む……。

 

 

 

 

 

 

 

人間原理

 (恥ずかしながら)初めて知った概念であったため、咀嚼するためにも書いてみる。「人間を誕生させるために宇宙は誕生した」という概念。ファッ!?逆じゃないんか?

→いきなりすぎるから、具体例を交えつつ考えてみよう。

・もし地球が太陽に近ければ水は蒸発してしまうし、遠ければ凍ってしまう。地球は水が存在できる丁度良い位置にある。

木星土星のおかげで地球は隕石の雨にさらされることはない

こんな感じで地球は人間が誕生するのに適した環境だった。というよりむしろこの宇宙は人間の発生条件を備えすぎている。

→人間を生み出すために宇宙はあるのでは?:これが人間原理。うーん、わかるような、わからないような。

「そもそも人間原理って宇宙が一つだけだと、みんなが勘違いしてたから、ある程度の説得力があったのよ」

確かに、そうだよね。宇宙がいっぱいあって、その中に人間を生み出してない宇宙があるのであれば、人間原理の考え方が通用しないよね。

→無数にある宇宙の中の1つが人間の発生条件を満たしていた。人間が誕生するような奇跡的な条件がそろっていたのはたまたま。

これと同じ話を針にも適用する。人類はいくつも宇宙に針を放った。そのうちの1つの群れが意識を持ち、共通幻覚を見るようになった。つまり、今ある状況は全てただの偶然なのだ!なんだか、最強の論理展開のように思えるのだけれど。合っているのかな?難しいから、なんか本でも読んで勉強しようかと思う。

 

【針】

 宇宙に何かを送るのってロマンチックで良いよね。ボイジャーのゴールデンレコードとかもそうだけれど、未だ見ぬ(もしかしたらすでに出会っているのかもしれないが)誰かに向けてメッセージを発信するっていう行為って、期待と寂しさが詰まっているから好き。月角島も言っていたけれど、針を送り出した人類は滅亡を予見していたのかもしれない(もちろん単純に開拓のために送り出した可能性もあるけれど)。仮に人類が滅んだとしても、人類が生きていたという証は残り続けてほしい。

 

月角島の迷い】

 この学園は全員女子、つまり個体差が少ない。したがって、悪影響を受けたときに全滅する可能性が高い。悪影響を受けないのであれば少ない犠牲で済むというメリットがあるけれど。そこで学園としては次のうちどちらかの方針を決めなければならない。

①現状維持 ②環境に合わせて変化

マグネターを迂回する√が見つからない以上、②を選ばざるを得なくなる。もちろん①のメリットを裏返したものが②のデメリットになる(現状で問題ない前提なら、多様性を生み出すのは無駄な犠牲を増やす可能性がある)が、それ以上のハードルが②にはあった。生徒を構成する針は無限ではない。新たな針を生み出すには今ある針を使うしかないということ。当面の間は壊れた針を繋げるというその場しのぎはできるが、それにも限りがある。部品がなくなったら、今ある自分たちの体を使うしかない。つまり、新しい意識を生み出すために今の意識を削除(殺す)必要があるということ(アーカイブは有限であるため、個人の意識を全て残しておくことなどできない)。②を選ぶ場合、多様性を得るために生と死を繰り返すことになる(これを受け入れられるかというのがハードル)。

 これは確かに究極の選択と言ってよいレベルだね。傍から見てる立場としては②を選ぶしかないじゃん!って言う。これはユカリと同じ意見で、全滅するくらいなら誰かが生き残る可能性に賭けた方が良いと思うから(夕陽流に言うとこっちの方が未来があるから)。さらに(これまたユカリと同意見で)気持ち的なことも言えば、全滅するくらいなら何かを残して死にたいと思う。自分がいなくなったとき、自分が生きていた明石がどこにも残らないというのは悲しいことだと思う。ユカリが頑丈な薔薇をつくりだそうとしているのは、こういった気持ちからかもしれない。しかし、自分が作中の中の人物なら①を選ぶと思う。これは月角島と同じ感傷的な理由による。自分の意識のままで生き続けたいし、今ある学園のままで生活したいと思う。長い年月をともに過ごしたもの(人だ郎がものだろうが)に対して思い入れが強くなってしまうタイプだから、そんなにスパッと切り替えられないと思う。多分、地球が滅びるけれどロケットで脱出するかと聞かれたら地球に残るのを選ぶタイプだと思う。

「みんな死んで、私が最後の一人になって、そのまま滅んでもいいと思っているの」

これめ↑ちゃ同意見。もしかしたら、月角島は学園で1番最初に発生した意識なのかもしれない。そんな感傷的な理由を持ってる人間からすれば、それを破壊することになる夕陽に嫌な気持ちを抱くのは(夕陽が正しいとわかっていても)しかたない気がする。はじめ、わざとわかりにくいようにもってまわった説明のしかたをしていてたのは、そういう気持ちがあったからかもしれない(もちろん、月角島の元々の性質というのもあるかもしれないが)。

 

【連続殺人事件の意味】

①非常時に男子がどのような立ち回りをするのかの観察

②そもそも男子がどういう生き物なのかの観察

これらだけなら別の殺人事件でなくても良かったと思ったが、なるほど、生徒全員に死を意識させて反応を見るという目的もあったのね。じゃあ、殺人事件じゃないとダメだもんね。納得。

 夕陽は「この事件って月角島さんの願望の投影ですよね?」と言っていたが、確かにそういう側面もあるかもしれない(あくまで側面程度ではあると思うが)。現状維持を望んでいる月角島からすれば、男子を受け入れることは世界を壊すことになるわけだから、そんなことになるくらいだったら自分は消滅してしまいたいと心のどこかで思っているのかもしれない。

 

【しほんとの再会】

 ここけっこう悲しかった。

「あ。見えてきた。今ね、重なって見えるんだ。部屋と星空がね、重なって。あはっ。すごい光景なんだよ、ゆーちゃん」

このセリフ、かなり心に刺さるよね。当の本人である夕陽からしたら辛いことこの上ないだろうけれど。心なしか、しゃべり方もたどたどしい(言語機能にも障害が出始めている?)。ただしほんの口から「男子の変異に適したシーケンスデータベース」なんて言葉が出てきたときは、さらに悲しくなってしまった。もちろん、事件に積極的に関与しているとわかった時点で、しほんは裏側の事情を知っているのであろうことはわかっていたけれど、しほんは何も知らない一般生徒であってほしかった。たとえば、上条当麻からすれば吹寄制理みたいな、「裏側の事情とは何の関係もない、HOME(帰るべき場所)の人間」ってのが大切だと思うんだ。もし、自分が夕陽の立場なら、しほんがそうではないとわかってしまったら、なんだか帰るべき場所を失った気がして悲しくなると思う。

 ただ、救いであったのは、しほんが夕陽を選んだ理由がきちんと心のこもったものであったということ。これが単純に男子にするのに適していたみたいな血の通ってない理由だったら、夕陽の精神は崩壊しただろうが(まあ結局、崩壊してるけれど)、しほんが夕陽を選んだ理由は、紛れもない「好き」という感情からであり、これに関しては夕陽はうれしかったと思う。

 しかし、この後のしほんの発言

「あはははっ、変な作品ではないけど男子をつくろうとしてたよ」

でまた傷つけられることになるよね。別にしほんは夕陽のことを作品扱いしたかったわけではないと思うけれど、「テスト」とか「男子をつくろう」みたいな言い方をされると、「パートナー」として絆を強めてきたと思ってる夕陽は傷ついてしまうよね。「群れの維持に限界が来たら男子をつくりだすようにするプログラム」がしほんの中には眠っていたわけだけれど、残酷だなあと思った。何が残酷かって、男子をつくるようになったら個体の消滅が設定されている点だよね。確かに、安全策としてはそうなんだけれど、悲しい運命ね。女子だけという学園の基本を覆すことになるのだから、あっちこっちで男子がつくられていたら、もし男子が危険な存在となった場合に困る……、したがって、安全策としてプログラムを搭載した個体は男子をつくった時点で消滅が運命づけられる。正論ではあるけれど、夕陽としほんからしたらたまったもんじゃないよね。大切なパートナーと離れ離れになるわけだし、そんなプログラム知ったことか!どうして、自分なんだ!と叫びたかったに違いない。

 このシーンの一枚絵は作中で最も悲しく美しい一枚絵と言ってよいと思う。というか、なかなか無いよ!こんな一枚絵!万が一ほどの可能性しかないとわかっていながら、それでも愛する人を救いたいから、愛する人の首を絞め殺そうとする……。あまりにも悲しい運命を表したシーンだった。

 とても悲しいシーンではあるけれど、月角島とユカリとベルリンはこれまで何度もこれを経験したってことだもんね。よく発狂しなかったと思う。

 

 前回と同様に謎の振り返り。

謎⑥夜勤の救護班って何?夜に怪我することあるの?

 解決。殺人鬼が夜中に行動することが多いというのもあるだろうけれど、それ以外の怪我も担当しているのだろう。この世界には病院なんてなさそうだし。全ての怪我はここで受け持っているのかな。

謎⑦宇賀島ユカリは何者?殺人鬼は何の役割を負っている?

 解決。予想では、殺人鬼に殺されることが卒業だと思っていたけれど、真実は少し違うかった。

謎⑫空丘島、月角島、宇賀島の名前は似ているけれど、何か関係ある?

 解決。確かに、少なくとも1人は本当の姿と旅の目的を知っている個体がいないといけないもんね。でも、真実を知っている分だけ、辛い気もする。何も知らない方が幸せなんだろうと思う。にしても、なんで「島」なんだろう。単純にいろんな名前に付けやすかったからかな?

謎⑬今年の冬は異常(寒さが厳しく、殺人事件が多い)がその理由は?

 解決。寒さが厳しいから壊れる人が多く、殺さねばならない人が増えたと言うべきか。

謎⑮夕陽の性器はどうなっている?

 解決。まだ完全に男にはなってないわけだから、ジャンルとしてはふたなりになるのか?

謎㉔月角島の悩みとは何だったのか?

 解決。そんな壮大な悩みだったとは。思春期特有の些細なことも世界の終わりのように考えてしまう、なんてものではなく、本当に世界の終わりがかかっている悩みだった。

謎㉘月角島が水名に喧嘩を吹っ掛けたのはなぜ?

 解決。水名の卒業が近づいているからっている部分は当たっていた。ショック療法が必要だとは言え、かなりの荒療治だよね。

謎㉙月角島が友達だったという殺人鬼は宇賀島ユカリ?

 これはたぶん蔦凪島のことで良いと思う。「友達だった」って言っているからね。

謎43蔦凪島はどういう人物だったのか?

 先代の殺人鬼。ユカリは蔦凪島からナイフファイトを教えてもらったらしい。ユカリの言動からすると、ユカリはかなり蔦凪島を慕っていた様子。「駆逐艦が故障した船に反応する」ということで、熾火が目覚めてしまったわけだけれど、ユカリは「蔦凪島の時以来じゃないか!」と言っていた。元々、蔦凪島が殺人鬼をやっていて、ユカリが故障した船に近づくことで覚醒してしまったのか?そうではなくて、蔦凪島が故障した船に近づいたことで、自身も故障してしまったということか?蔦凪島が死んでいなかったら、オレが死んでいたかもしれない、という発言をユカリがしていたから、校舎のとらえ方が正しいような気もする。

 

 本筋とは関係ない感想。夕陽に対して「興奮するぜ」って言っているときのユカリ、頬を赤らめててかわいい。クール系女子が照れるところって本当にかわいいよね。夕陽が月角島と話し終えて、第二手芸部の部室に向かうときに流れてるBGMっていつもと違うよね?けっこう細かいなあと思った。おまけで確認したところ、普段のBGMが「1.Skipping in daylights」で変わっていた方が「19.Depressed in spirits」だった。会長も3カーネーション前では名探偵をやっていたようだけれど、どんな仕事をしていたんだろう?単純にいろんなことをやろうとした末のものだと思うから、夕陽と同じような状況ではなかったと思うんだけれど。

 

〇名セリフ

「全員が疲労と絶望の極みに達した集団は死を渇望するわ。生贄として誰かがその願望をかなえた時、集団は正気を取り戻すのよ」by星都チエミ