【ゲームの感想】ふゆから、くるる。(途中経過9:まとめ1)

 遂に、エンディングまでたどり着いてしまいました。2回にわたってまとめの感想を書いていこうと思います(まあ、前回もまとめみたいな内容でしたが)。というかこのゲーム最後の最後にメッセージ詰め込みすぎだよ!針の真相以降、Hシーンの中のセリフも含めて、書きたかったんだろうなあということがぎゅむぎゅむ詰まっていた。

以下、重大なネタバレを含む……。

 

 

 

 

 

 

 

月角島ヴィカ】

 こいつは一体、何度、月角島を取りあげれば気が済むんだ!と思われるかもしれないが、許してくれ。好きなキャラクターだから毎回、語りたくなっちゃうんだ。月角島はそこまで群れの存続が大切だとは思っていない派なわけだ。群れの存続以上に「今」に拘ってしまっているからだね。さらに、今回は蔦凪島に対する思いを吐露するシーンも多かった。こうして振り返ってみると、「月角島→蔦凪島」と「空丘夕陽→霜雪しほん」の状況は似ている気がする。蔦凪島と同じ外見だが中に入っている意識が別の個体が生まれるかもしれないことについて、月角島は気持ち悪いと言っていた。夕陽もしほんの頭部が見つからず、一からしほんを作り直さないといけなくなった場合、それはもはや別の個体であり受け入れがたいという旨の話をしていた。月角島が蔦凪島の首を絞めるシーンが出てきて、より似ていると強く意識した。ただ結局、2人とも好きだった人を失ってしまい、そこから脱出することができたなかったわけで、同じ結末を辿った。

 これが月角島のポイント1「過去に囚われたまま」。前から月角島が動揺したときに出てくる「が」の意味がようやく明かされた。これまた過去を引きずったものだった。こういう風に過去を引きずるタイプだから5カーネーション前の記憶まで持っているのかもしれない(アーカイブに残しているというのもあるだろうけれど)。過去にとらわれている人間は、今ある幸せや未来に横たわっている幸せに気づくことができないから、不幸な人生を送ることになるわけだけれど、月角島がさらに不幸なのは、さらに進んでサヴァイヴァーズギルトのようなところまで思考が進んでしまっているところだよね。蔦凪島の苦悶を覚えているから、自分が幸せになろうとは思わない。ユカリが「月角島は自分を不幸にするために生きているのだろうな。」と評していたのはこういうところだよね。

 そして、月角島のポイント2「変化を受け入れられない」。まあ、ポイント1と重なるところも多い気はするけれど。これに関しては前の記事で述べたからもういいか。前回は変化を受け入れられない理由は、今の状況を壊したくないからみたいな書き方をしたけれど、言い方を変えたら、変化を受け入れる勇気がないから。変化を受け入れるのは怖いことだからね。と書いたけれど、最後に月角島は水名とのHを経て、自分が変わってしまったことを意識していた。むしろ空丘よりも良い結末を迎えたと言えるの🦆。細かいことだが、月角島の名を継いだもの(何世代後の子孫かはわからないが)は胸の前で手をぱんと合わせられるようになっていたね(ヴィアはぽすだった)。

 以上の2点が、自分と似ていて好きになってしまった。でも、こういうタイプが1番人間臭いと思うんだ。ちなみにcv.の水野七海さんはYouTubeでも活動しているので、ぜひごらんください。

 選択肢が3つあって、今まで選んでこなかった方を選んでみようと思って戻ったけれど、選んでこなかった方を選んだら即Gameoverなんだね(BadEndと言えるかはわからないけれど)(3つ目の選択肢は特に影響ナシ?)。即Gameoverの√に入ったら、月角島が雪の上で寝転んでる一枚絵が見られると思うのだけれど、それがバグって見られないのは私だけ?

バグ?

というか最初はバグだと思っていなくて、これが正規のものだと思っていた。生徒たちのお墓が無数に立っているのを表しているのかと思った。でも、終わった後「おまけ」からCG一覧を見てみたら、全然そんなことなかった。CG一覧の方でも、選択する前は月角島が雪の上で寝転んでいる一枚絵になっているのだが、選択すると結局、上のがゾになってしまう。どうすればいいんだ?この√に入ったら、月角島自身は後悔してないようだから幸せと言えるのかもしれない(もちろん、選択しなかった方の未来をっ見通すことはできないから、真の幸せというのをわからないまま死んでいくことになるのだが)。とはいえ、これはこれで綺麗な終わり方だと思う。

 

【空丘島朝日】

 遂に冒頭のシーンに帰ってきた。冒頭ではサラサラと読み流していた部分も、こうしてみると1つ1つ噛みしめたくなる気分だった。

「なんだろう?見ているだけでドキドキする容姿だ。」

「可愛い声だ。魂をそっと撫でられたような気さえする。」

霜雪しほんと空丘夕陽のことを知っていたら、こういう文だけでもウルウルしてしまう。どういう関係なんだろうと思っていたら、もっともっと世代が後の子孫たちだったのか。まさしく運命というものだと思う。外見はただの再利用だから、別に血を引いてるとは言えないのだろうけれど(なんなら霜雪しほんは卒業しちゃったしね)。

 ところで、「れぷと」って何なんだろう(無知)。しほんとかすふれとかと同じ系統だと考えたら、ケーキの仲間かと思ったけれど、調べても出てこなかった。

 

【祈りのチェス】

 祈りのチェスは物語に関わってきた。というか、物語をまとめる要素として出てきた。156手で引き分けるのか。チェスはあまり詳しくないのだけれど(駒の動かし方を知っているだけ)、実際、チェスの世界にはこんな感じの話ってあるのかな?解析したのは夕陽のようだ(夕陽以降だったら空丘島と表現されるだろうし)。チェスの世界は自分たちの世界の代わりに終わってしまったから、究極の手順通りに祈りをささげる、それが祈りのチェス。

 この「幸せでありますように(幸せを祈ること)」はこの作品のテーマの1つだと思っている。誰に対する祈りか。それは、意識を持つすべての人々(自分を生んでくれた意識、自分から生まれてくる意識、他の意識、そして自分たち……etc.)。前回の記事の最後にも書いたが、

「でも、みんなそうなのかもしれない。どんな場所でどんな風に生まれたって、つらい旅をするために意識は生まれるのかもしれないわ」by星都チエミ

というセリフがあった。生まれてくる意識は辛い旅をすることになるし、なんだったら生を受けたことを呪うかもしれない。だから、私たちはみんなで意識を持つすべての人々に「幸せでありますように」と願ってみてはどうか、というメッセージだと思った。お互いにお互いの幸せを祈れば、幸せの交換になり、皆幸せになれるだろうという考え方もあるのかもしれない(交換の話は朝日が言っていた)。朝日のセリフで、

「願って。私のために。私達のために。みんなのために。ーーあなたのために。」

とあった。このとき朝日は見えない誰かを想定して会話してるから、このセリフにおける「あなた」とは朝日が想定した聞き手ではあるのだが、まるでプレイヤーに話しかけているような感じがして、面白い仕掛けだなあと思った。

 

【生きる理由、死を受け入れる理由】

 この作品のテーマの1つだと思っている(実は下書きが済んでいる次の記事でも語っているのだが)。そちらでは生きる理由について述べたから、こちらでは死を受け入れ(られ)る理由について重点的に考える。生きる理由は「群れの存続のために新しい意識を生み出したいから」だったけれど、死を受け入れられる理由は「生まれてくる新しい意識から感謝されるから、誰かのために死ぬんだっていう確信があるから」。自分が生きていたんだぞっていう証を残してから死にたいと思っているから、子どもはそれに値する。まあ、子どもいないからあまり実感できるわけじゃないんだけれど。そういう意味では子どもはお墓の役割も兼ねていると言えるのだろうか(この文だけみたらかなり極端な思想の持ち主のように思われそうだが、そうではない)。誰からも忘れ去られたとしても、お墓があればそれを見たときに、誰かが生きていたんだってわかってもらえる。同様に、子ども(というか成長して大人でもいいけれど)を見たら、必ずその人には親がいるわけだから、そこでどんな人かはわからないけれど、生きていたんだなってわかってもらえる。こういう意味では、子どもはお墓の役割も兼ねているんじゃないかって言いたかった。ただ、「新しい意識」を生むというのはそれだけでなく、未来が見えるという良い点もある。自分が命のバトンを引き継いだのだと、そして、自分の子どもだけでなくその先々まで続いていく系譜が見えるような気持ちになるのではないかと思う。そうなると、安心感のようなものを覚え、それが死を受け入れられる理由になるのではないかと思う。今後は「新しい意識を生み、誰かのために死ぬ行為」を「卒業」と言った方が良いかもしれない。

 

【宇賀島と雲母】

 この2人も運命的な出会いを感じていた。それぞれがユカリや舞歌の血を直接引いてるかはわからないが(そもそも血を引いているという表現自体適切ではない気がするが)、意識の片隅に過去の記憶が残っているのかもしれない。壊れた船の針を再利用するとも言っていたから、その中にユカリの記憶が残っていたのかもしれないけれど。

 

【旅の終わり】

 あまり仏教について詳しくないのだけれど、補陀落山とは観音菩薩が降り立つとされる伝説上の山らしい(Wikipediaで調べただけ)。さすがに何か仕掛けがあるのだろうとは思っていたが、まさか天体だったとは。作中世界で初めて補陀落山と名付けた人は、その時点で補陀落山が目指しているゴールだとわかっていたのかもしれない。仏教については全然詳しくないから、あまり適当なことを書かないでおこうと思う。最後に幻獣事典の引用が出てくるけれど、ここからインスピレーションを(作者が)受けて補陀落山という名前の設定にしたのかな。

 ただ、学園の皆の旅はまだまだ続くと言っていいと思う。当初の目的地に着いたから宇宙旅行という意味での旅は終わりと言える。しかし、「群れの生存」という意味ではこれからも営みを続けていかないといけないから、まだまだ旅は続くと言える(「In, life, unlike chess, the game continues after checkmate」)。補陀落山に降り立った生徒たちも宇宙に向かって針を放つのではないかと思う。なぜなら、

「なんか、こうさ……うまく言えないけど……。広がらなきゃという気持ちがあるんだん」

という雲母のセリフにもあったように、「広がりたい」という本能があると思うから。これは生物としての本能だから、脳の情報が積み込まれた針であってもそれが残っていたのだと思う。きっち「幸せでありますように」と願いながら、針を送り出すに違いない。

 にしてもこの最後の雲母のセリフの部分、メッセージがぎゅむぎゅむと詰まっていて、こちらがくらくらするレベルだったね。めっちゃエネルギー弾を撃ち込まれている気分になった。雲母の言う「私達の情報を見た人」はその文脈の中だけで考えたら同じ作中世界で情報を受信した人ということになるけれど、プレイヤーに訴えかけるようになっているっていう仕掛けだよね(朝日の祈りのときと同じ)。

「--想像する。

あなたーーじゃなくて、キミを、想像する。

キミを想像するよ。

見ている。

見ているキミを想像する。

聞いている。

聞いているキミを想像する。」

これまでプレイヤーとして一歩外の世界から見てきてたわけだけれど、ここの部分で急に作中世界に自分も入り込めた気がして感動した。雲母自身が言っていたが、こういう風に心が揺らされたから、それだけでも雲母たちの旅に意味はあったのだと思う。

「キミの心に少しでも私達が残ったら、それが旅の成功なんだ。」

 

 その他、感想。星都の名を継ぐ者はやはり生徒会をしているようで面白かった。菊間は白衣を着ているけれど、救護班になったのかな。宇賀島ベルリンもなかなかだったけれど、宇賀島ジャカルタて。そういえば宇賀島の双子関係はどうなるのだろうか?ユカリとベルリンは同時に発生した意識だと考えると、完全に双子だけれど、ジャカルタとゆゆゆは同時に発生したとは限らないよね。現実が幻想に侵入するって、SFらしくて好き。

 その他、今まで取り挙げてきていた謎の回収。

謎①冒頭の2つの引用はどんな意味が込められている?

 うーむ。これだけだとあんまりよくわからないから、実際に本を読んでみる必要がありそうだ。読んだら、また記事にするか。

謎②冒頭、宇宙と交信しているのは誰?

 針の真相が明らかになったときは、針を宇宙に放った人が発した言葉かと思っていた。

謎③オウムアムアの正体は?

 オウムアムアの侵略説とか唱えてたけれど、オオハズレだった。

謎④地熱発電所って意外と鍵になってくるんじゃないの?

 特に鍵になることはなかった。とりあえずなんでもかんでも意味を持たせようとする、悪い癖が出ちゃった。出力は落ち続けたものの、最後まで稼働し続けたらしい。

謎⑧カーネーションの目的は?

 途中経過1の記事を自分で読み直したけれど、予想オオハズレだった。

謎⑨空丘島朝日と空丘夕陽の関係は?

 解決。上で述べた。

謎⑩月角島ヴィカの正体は?

 解決。懐柔する力に関しては、初めて会ったときに良くない方の選択肢を選べば、その時点でも何となく力の存在を察することができていただろうなと思う。

謎⑪成長の止まった生徒会長

 解決。事件にめちゃめちゃ関わってくるとかそんなことはなった。

謎⑭図書館の曼陀羅

 解決。chaosを意味していた。

謎⑯夕陽は人が心変わりするところを何度も見てきたそうだが、それはどういうものだったのか?

 ?なんか読み取り損ねた気がする。

謎⑰植台地事件の詳細

 解決。殺した後、初期化させないこともあるんだね。精神だけが男だったのだろうというユカリの説明は上手いと思った。

謎⑱今回のカーネーションで夕陽がHな意味でモテモテなのはなぜか?

 解決。そもそも個体差があったのだ!

謎⑲耳鳴りの正体

 ?これも単純に読み取り損なった気がする。

謎⑳夕陽が淫乱であるという噂の詳細

 この噂については特にこの後、触れられることはなかった。夕陽に対してHだと感じる女子が多くて、噂がひとり歩きする形となったのだろうか。

謎㉓祈りのチェスは物語にどう関わってくる?

 解決。上で述べた通り。

謎㉖「水名ちゃんはまだちゃんと起きてないんだもんね。」のセリフ、何か隠されてるんじゃね?

 これもまた悪い癖が出てただけ。疑いすぎだ!

謎㉚殺人鬼と生徒会の結びつきはある程度強い?

 特に強いというわけではない様子。殺人鬼、というかユカリは島の人たちとは結びつきが強いみたい。まあ、学園の中で真実を知っているのは島の人たちだけだもんね。月角島が言っていたような選民思想のようなものをユカリが持ち合わせているとは考えにくいが、見えている世界が違うのだから気まずさはあったのだと思う。ナイフは生徒会が管理しているという話だったが、ユカリのナイフはそれには縛られないものなのだと思う(殺人鬼は認められた存在だから、管理する必要もなかったか)。

謎㉜地熱発電所の出力が低下してきたのはなぜ?

 解決。マグネターのせいで幻想の世界にもガタが来ていた様子。現実が幻想に入り込んだ結果。

謎㉝この学園には刑罰が存在するのか?

 強制カーネーションの刑などがあった。

謎34この学園はどのようにして始まったのか?

 結局、学園は幻想世界だったわけだけれど、みんな同時に幻覚を見始めたのかな?

謎㉟月角島の虚無苦笑はなんだったのか。というかそんな疑問に思うことなのか?

 月角島については散々述べたからもういいか。なんなら、次の記事でもまた月角島について書いているからね。

謎㊲収穫祭の詳細を知りたい。

 蜂蜜酒を飲むらしい。

謎㊳学園の女の子はどの程度、外の世界のことについて知っている?

 本で得た知識でしか持ってないみたいだから、偏りはあるのかもしれない。

謎41夕陽が犯人である可能性は低いと星都が考えている理由は?

 ?読み取り損ねた。

謎44「こんにゃん」「うんにゃん」「にゃんにゃん」は何かの暗号ではないか!?

 これも悪い癖が出ただけ。でも、冒頭のシーン、もっとちゃんと読んでおくべきだった!「古くから伝わる」って書いてあったんだね。最後に戻ってきたときに気づいた。

 

【雑談】

Isaac Asimov『Fantastic VoyageII』

ホルヘ・ルイス・ボルヘス

マルガリータゲレーロ『幻獣事典』

↑せっかくだから読んでみるか。